2012年2月29日水曜日

どうしたらそんな風に踊れるの?

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先週の木曜日、自分でも信じられないような体験をしました。

おそらくルーマニア出身で最も有名なバレリーナはアリーナ・コジョカルさんです。彼女は現在ロイヤルバレエのプリンシパルで日本にも何度となくゲストで来日されています。
私がロイヤルに留学していた時、彼女の舞台を何度となく観て本当に憧れ、こんな風に舞台上ですごく自然体でいて人を感動させられるダンサーって見たことない。と感動しました。

そのアリーナコジョカルさんと並ぶほどの素晴らしいダンサーがこのバレエ団にいる。と私が聞いたのは1年以上も前の話です。いつか彼女の舞台を観てみたい。と思っていたのですが、先シーズン、彼女は一度も舞台に立たず、今シーズンになってからも12月まで1度も機会はありませんでした。

もちろんバレエは誰かと誰かを比べてどっちが上だとか、、そういうものではありません。
でも、コジョカルぐらい、、人によってはコジョカルよりも素晴らしいってバレエ団のみんなが口を揃えて言いたくなる訳が先週の舞台で、実際彼女を目の当たりにしてわかったのです。

彼女はこのバレエ団のプリンシパル。一児の母で年齢は40歳前後なので今は第一線で踊っていません。
やっと彼女の舞台を観れる時が来た。と楽しみにしていました。

でも正直に言って、1年以上舞台に立っていないとなると、いくらみんなが素晴らしいって称えるダンサーでも・・・・・・という想いがありました。

自分が毎日トレーニングやリハーサルを積み、数多くの舞台に立っているにも関わらず「良くできた」と言う日がないからこそ、そのブランクが気になりました。それだけ舞台に立って観客の目を捉えることって難しいと感じるからです。

でも、本当に本当にものすごいものを観ました。客席にいてこんな体験をしたのは初めてです。

彼女が一歩舞台に現れた瞬間から瞬きも忘れるぐらい、他のダンサーは見えなくなるぐらい、圧倒されました。「きれい」とか「すごい」とか「上手い」とかそんな言葉が失礼なほど。
彼女の存在感は観ている人を巻き込みます。

上手く表現できない自分の文才の無さがもどかしいですが、私は舞台を観るとどうしても、「今のステップ難しいのに上体も軽やかですごい」とか「このステップからのこの回転は難しい」とか観ながら頭で考えてしまいます。
でも今回、彼女が舞台に現れて最後姿が見えなくなるまでそんなことは一切浮かびもしませんでした。

こんなことは初めてでした。
彼女をただ席に座って観ているんじゃなくて、巻き込まれてる感じがしたので、冷静にそんなこと考えてる場合じゃなかったんだと思います。。

なんでこんな風に人を圧倒させることができるんだろう。と私なりに考えてみたんですが、
それは彼女の心というか「気」が踊りを通して異常なほど伝わってきたから。
その役柄に対する解釈や、想いが怖いほど伝わってきたからだと思います。

私たちが普段しているハードなトレーニングは、あくまでも彼女のように表現する手段を磨くため。
私にはその普段のトレーニングを舞台上で表現力として応用する力が欠けているから「イマイチ・・」と思う舞台ばかりなんだとと改めて感じました。

私のバレエに対する概念を思いっ切り覆すというか、、違う次元に引き上げてくれる体験でした。

周囲にそんな人がいることって長い人生でも、ものすごく稀なことだと思います。

次彼女に会ったら率直に、「どうしたらそんな風に踊れるの?」って質問してみようと思います。

2012年2月19日日曜日

アンサンブル

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木曜日のジゼルでは出演予定ではなかったのですが、急な怪我人の為、1幕のワルツと6フレンズを踊り、久しぶりにコールドバレエとして舞台に立ちました。

コールドバレエとはいわゆる群舞で、プロのダンサーは、極少数の例外以外はみんな経験し、そこを原点にダンサーとして上がっていきます。

腕や足の位置、体の向き、頭の角度、前後左右、斜めの列や間隔など、コールドバレエならではの注意点が山ほどあります。

これが出来て、それにプラスして何か他と違うものを舞台上や普段のリハーサルで見せることが出来れば、少しいい役をもらえる機会をもらえたりします。

こんな風に言えば反対意見もあるかもしれないけど、あらためてコールドとして舞台に立ってみて思ったことは、やっぱりバレエの醍醐味はソロや主役をしないと感じれない。でした。

と言っても、私もディレクターが今シーズンから変わって以来一度も主役を踊ってないので、あくまでもできたらいいなぁ・・・という希望を交えて言ってます。

なんて表現していいかわからないですが、コールドバレエは絶対に必要不可欠です。でもそれはあくまでも主役を引き立て、物語に色をつける役目。と言うか、「飾り」なんだなと肌で感じました。

どうやって表現するか?とかどう踊ろうか?とか考えることは少なく、主役の背景になることに徹します。そしてとにかくひたすら隣の人に合わせて、動きが一緒になるように集中します。

ものすごく大変なことですが、舞台が終わってからの疲れは普段ソロを踊ってるときの疲れとは全く違ったものでした。
制限からくる気づかれ・・という感じです。

もちろん、群舞はバレエキャリアのスタートとしては絶対に避けては通れないもので、ここで学んだことが後に生きてくることは確かだと思います。

でもやっぱり、どっちにしろ大変なことをやるなら自分のキャリアをバレエの本来の良さを体感することなく終わらせたくない。と強く思いました。

・・・・そうなると私は年齢的にゆっくりしてられないので、もっと自分を伸ばしてくれる機会をもらえるバレエ団に移籍することも考えてみようと思います。

でも何よりもまず、今の自分には何が足りなくて今この位置で留まっているのかをもっとよく考えてみようと思います。

基本的にプロでやってる人はそれなりに努力家なので、毎日のルーティーンワークをみんなと同じようにやってるだけでは維持は出来ても、何一つ変わらないんだと思います。
もっと上がりたければそれにプラスして自分に負荷をかけないといけないんだなと、ちょっと危機感を持った経験でした。














                      at the rehearsals..

2012年2月6日月曜日

ローマレポート

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     オーディション、行ってきました。

私が今回参加したのはイタリアのTVshow [Amici]と言う番組です。
この番組は、若いダンサーやシンガーが集まりそれぞれ与えられた課題でトーナメント戦を勝ち抜いていく過程を見るオーディション番組です。
優勝者にはプロのカンパニー(やレコード会社)からの契約と莫大な賞金が授与されるそう。
クラシックバレエ、ジャズダンス、ヒップホップ、シンガー部門などたくさん専門分野に分かれていて、それぞれの得意分野で戦います。
審査員はその分野で著名な人。最終審査にはバレエではベルリン国立バレエのポリーナセミオノワさんやボストンバレエの芸術監督MikkoNissinenさんなども来られたことがあるそう。
そんな番組をヨーロッパに何年も住みながら今まで知りませんでした・・。

動画の男の子は2009年のファイナリスト。彼はこのオーディションでボストンバレエからオファーが、ボストンに入団後このシーズンからは同じくアメリカのCincinnatiBalletでソリストだそうです。





このオーディションに参加するのにももちろんオーディションで受からないといけないのですが、私たちは(ONBから4人参加しました)コンペティターとしてローマに行ったのではありません。年齢的にオーバーです・・。
そのコンペティターと一緒に踊るデモストレーター候補としてオーディションに行きました。


早朝ブカレストの空港を出て1時間45分、ローマの空港ではTV局のスタッフさんがお迎えに来てくれていました。車で収録スタジオに直行するよう。

空港から外に出ると、暖かさに驚きました。ルーマニアは毎晩マイナス20度にもなる寒さなので、雪もないし、まるで春のようでした。


空港から車で30分ほど、Amiciが収録されるスタジオに到着、待合室兼更衣室の代わりに今使ってないTVセットであるアパートのようなところに案内されました。
部屋のあちこちにカメラが、、すぐに審査があるのにすっかりお上りさん気分でした。



着替えを済ませて審査のあるスタジオに行き、30分ぐらいでウォーミングアップを終えると審査員たちが入ってきました。
デモストレーターの審査はTV公開ではないし、きっとTVのプロデューサー達が審査するのだろうと思っていたら、本当にAmiciの審査員が・・。下準備の段階ででもこうやって番組作りに関わるのですね。

私たちはそれぞれ用意していったバレエのVaやパドドゥを踊りました。
私たちがこのデモストレーター候補に挙がったのが急で、審査の日も迫っていたのでそれぞれ1曲づつしか用意できなかったのですが、みんなが踊り終わった後、
「曲はこちら側が用意してるので、全く違うタイプの曲をやってみてほしい」と審査員側からリクエストがありました。
私はパキータのエトワールのVaを踊ったのですが、ドンキホーテのキトリは?と言われたので、扇子(この踊りは扇子を持って踊ります)無しでやってみました。

みんな一通り2曲目を踊った後、「では、これから私が振り付けた作品の一部を踊ってもらいます」と審査員の一人が立ち上がりました。
その方はコンテンポラリー系の審査を担当する人だったので、正直「そんなっ・・!」と慌てました。私はモダンが苦手だからです・・。

幸いその作品は流れるようなペースの曲で床に転げまわったり激しく動いてアクロバティックなことをしたりはしなかったのですが、やっぱり普段やってないとだめですね。。
一緒に参加した後の3人はバレエ審査の時と変わらない態度で堂々としているのに、私は振り付けが全然頭に入らなくて、ついていくのがやっとでした。多分クラシックとモダンの時の態度の違いは明白だったと思います。

普段嫌ってほどやってるバレエだから人前でも自信を持ってできる。
それ以外のフィールドでは私はなんてできないんだろうと思い知りました。目の前に審査員がいて途中で自分の都合でストップできない、この状況だったからこそ、痛いほどよくわかりました。

審査後は、また控室に戻り結果を待つことに・・。

数時間後スタッフさんがAmiciダンサーズと書いた用紙を持ってきてこれに書き込むようにと言いました。国籍身長体重、目の色、髪の色、靴のサイズ。将来の夢まで事細かに記入した後、全身と顔写真を撮って、「後日、電話連絡します」ということでその日は終わりました。
ローマから帰ってからまだ誰も電話連絡をもらってないってことは、このオファーはなかったということだと思いますが、本当にこんな珍しい機会をもらえ、いろんな刺激を受けれたことに感謝しています。

次の日からリハーサルがあったのでローマ滞在は24時間でしたが、審査終了後、街を歩きに出かけました。








                    とても有意義な休日でした。