2013年11月14日木曜日

自主公演






 






 




 


10月は、ダンサーたちが公演の演目やリハーサルスケジュール、振付、進行方法、レセプションパーティーの準備などすべて自分たちでする自主公演を行いました。

ダンサーという仕事はとても貴重で素晴らしいけど舞台でベストの状態で踊っていられる時間は一生のうちほんの少しです。その少しの時間のためにみんな陰でものすごい努力や体のケアをしますが、もちろん仕事だから、全てディレクターの意向に従わないといけないので全てのダンサーが演じたい役を踊れるわけではありません。
例えば、一度ディレクターに「このダンサーは脚が強いからジャンプが得意だけど、腕の動きが硬いから、ゆっくりなテンポの曲は合わない」と判断されると、その考えを覆すにはかなりの時間と努力と運が必要です。

カンパニーのダンサー数が少ないとその分めぐってくるチャンスや、自分を見てもらえる機会も増えるけど、大きいバレエ団になればなるほど、頑張っても少しでも気を抜けば、簡単に数多くの才能の中に埋もれてしまいます。
毎回プロダクションのキャスト発表はとてもデリケートな問題で、いつも誰が悲しんだり、喜んだり、不満だったり・・・バレエという自分の人生をかけてることで自分への評価が配役という形で現れるのですから、配役に一喜一憂するのは無理もないことだと思います。
競争の激しい、短い世界。でもそれ以上に魅力があるからみんな続けているわけですが・・。

そんなダンサーが最も恐れていること、それは怪我です。 身体に痛みがあると、思ったように踊れない、求められていることができない、でも無理をすると悪化する。っていう感じで悪循環に陥れば短いダンサーライフを自分のベストを尽くせないままダンサーとしてのピークが過ぎてしまうことだってあります。そして、もう一つ、困るのは(金銭的な)生活です、長い間踊れなければ解雇という文字も頭に浮かんでくる世界です。特にアメリカはバレエでもビジネスという概念が濃いので、ゆっくりベストな状態に戻るまで気長に待ってくれるのは稀なこと、その間に新しくディレクターの好みのダンサーがオーディションに来れば迷わずそっちを選ぶという酷なことだって起こり得ます。

そんな、不安定な私たちのダンサーライフを少しでも良くするためにカンパニーのダンサーが集まり、企画したものが今回の公演でした。怪我したダンサーや年齢のためキャリアチェンジを考えているダンサーなどに金銭的な心配なく治療や、次の就職先を見つけるために専念してもらうために、募金を募りました。 チケットの売り上げもすべて募金されます。

普段、自分の希望の役を踊れないので、この公演では自分たちの踊りたいものをリクエストしてプログラムを作りました。振付に興味があるダンサーも振付に初挑戦したり、仕事の一環ということを忘れてみんな楽しんでいました。 たまにはこんな機会もあっていいですね・・♪

カンパニー歴史上はじめての試みでしたが、チケットもほぼ完売、みんなの頑張りと、周りのスタッフのサポート、そしてバレエアリゾナのダンサーを応援したいとチケットを買ってくださったお客さんに感謝です。






 



2013年9月30日月曜日

3000人??

昨日は全6公演のパークショー最終日でした。

Ballet Under the Star そのタイトルの通り、ゴルフ場のような巨大な公演に特設ステージを設けて夜空の下で普段劇場で上演するバレエに限りなく近い状態でお客様に見ていただくというショーで、何十年と続く恒例の人気企画です。

チケットは無料、席も早い者勝ちで、芝生に持参でポータブルの椅子やマットで席を確保します。
早い人はステージ上でウォームアップクラスを受けるダンサーよりも早くきて座っていたりします。

開演2時間前


  
写真ではうまく伝わりませんが、お客さんを撮ったものです、奥の街灯があるところまですべて人、人、人・・・!!!一番人気の公演では約3000人集客したそうです。

そこでバレエ団の本当の狙い、「今シーズンのプロダクションの宣伝」をちゃっかりとする広報部の人たち。「今すぐケータイで今からいうアドレスにメッセージを送ってください!次回作のシンフォニーホールでのシンデレラのチケットが当たります!!」
「当たらなかった方も、今日ここにいらっしゃる方限定でチケット1枚購入されると、もう一枚プレゼントします!」

など、いろんな方法で宣伝してました。w

Buy one get one free (一枚買うとさらにもう一枚プレゼント!)って夜中の通販のお約束のよう・・
さすが、アメリカ・・日本のクラシックバレエではない概念です・・・

ステージを整えるスタッフ達、彼らが何もない平地にステージを組み立て、撤収するところまですべてやってくれます。大変な作業です。




ステージ真後ろから撮影しました。入りきれなかったお客さんは後ろから見てたけど、やっぱり後ろからでは全く違うので、正面から見てほしいですね・・・



さて、10月はたくさん舞台があります、一つはArtist Relief Fund(http://dancerfund.com/) と言ってカンパニーダンサーが行う自主公演です。公演の売上げや基金で、リタイア後のダンサーのキャリアチェンジや、産休するダンサーや怪我したダンサーのケアなどを金銭的にサポートするためのものです。
みんな忙しいスケジュールの中、初の試みを成功させるために頑張ってリハーサルしています。



2013年9月16日月曜日

新しい環境

今日は今シーズンから新しくなったリハーサルスタジオの一部を紹介したいと思います。


普段公演をする劇場はシンフォニーホールといってPhoenixの中心地にあります。

そして私たちが毎日練習するリハーサルスタジオは劇場からすこし離れたところにあります。



   ヨーロッパや東ヨーロッパでは劇場にリハーサルスタジオが併設されているのが大多数です。
でも、アメリカの多くのカンパニーは劇場と普段レッスンやリハーサルを行う場所は別にあります。

バレエ団リハーサルスタジオの外観です。写真で見るとシンプルだけど、実際は赤色がアリゾナのブルーの空に映えて、「かなり思い切ったデザインにしたのね・・」って感じです。



     今年からリハーサルスタジオのドレッシングルームにも団員一人づつ専用の机と鏡が用意     されました。 スペースも広くて居心地がいいです。



    毎朝クラスを受け、リハーサルをするスタジオです。これはスタジオ3、スタジオ7まであり、夜    はオープンクラスなどにも使われています。



   衣装スタッフさんの仕事部屋です。ここで毎月の公演で使う衣装が縫われたり手直しされたりしています。









 その隣にあるシューズ倉庫。1シーズン分のトウシューズやバレエシューズが収納されています。
公演の多い12月は1か月で約450万円分のシューズを消費するそうです・・・フリードのトウシューズはすぐに潰れるけど、この額を聞いたら少しでも長く履くように努力したいですね。。



   毎週1回、シューズリクエストというフォームに必要なトウシューズやリボンなどの数や種類を書いて自分の番号の郵便受け?のようなボックスに入れておくと次の日に自分のリクエストしたシューズが入っています。 
団員にスタッフさんが手渡しでいいじゃん・・って思うのは私だけでしょうか。

 ダンサー専用のグリーンルーム&ジム&フィジカルセラピールームのフロアです。


   



このほかにオフィスやロビーなどもありますがまた今度紹介したいと思います。



来週は恒例のパークショーです。
去年はライトに集まる虫が衣装にとまりかなり笑わされた思い出のあるパークショー・・来週3回、再来週3回、今年は10月にシンフォニーホールで上演されるシンデレラの抜粋とバランシン作品を踊ります。


 

2013年9月1日日曜日

2シーズン目のスタート

19日から始まった新シーズン。
今年からは、車を購入したり、引っ越しの計画を立てたり、バレエ以外にもたくさんやることがあります。
バレエ団では先シーズン思わぬところで気を抜いてしまい役を降ろされたり、その後なかなか認めてもらえなかったりで大変だったけど、今年は少なくとも同じ失敗をしないように気を引き締めていきたいと思ってます。

この夏からバレエ団の本拠地であるビルが引っ越しをしました。前のビルはリハーサルスタジオが3つしかなく、アメリカの中規模(団員40人前後)のバレエカンパニーとしてはちょっと狭いし、リハーサルのスケジュールも3つのスタジオを駆使しまくって詰めてたという感じでした。

でも今年からは、7つのスタジオ、ブラックボックス付き(大きなスタジオで客席がある小劇場のようなスタジオ)のビルに引っ越しをしました。 スタジオもものすごく広くなり、大きなドレッシングルームのほかに、ダンサー専用のグリーンルーム(休憩室)やジムやセラピールームもすべて完備です。
新しいダンサーも8人入り、新しいバレエ団に移籍した気分。。

新環境、また写真とってUPします☆

心配なのはけが人がシーズン初めなのに多いこと。 2か月のオフ期間に手術をした人や先シーズンからの怪我が未だに治ってない人、疲労骨折かも。。という人も・・
こうなると限られた動けるダンサーがその人たちの分をやることになります。そうなるとオーバーワークで新たにけが人が出るという悪循環に・・ 
今のところ私は怪我なしだけど、今からしっかりケアして予防したいと思います・・。


2013年8月18日日曜日

とても楽しい夏休みでした!

約8週間9週間の夏休みを日本で過ごして昨日アメリカ、フィニックスに戻ってきました。
長い夏休みを居心地の良い家族の元で過ごしたので、こっちに戻ってくるのは辛かったですが、今年はこのバレエ団で2年目。去年のような何がこれから起こるのだろうか・・って不安や心配はありません。もうどんな感じで1年過ぎていくのかも去年に経験してるので、去年失敗したことを繰り返さないように気を引き締めていきたいと思います。

なんとも言えない飛行機の中での、「あー日本どんどん離れていく・・!!」っていう寂しさはこっちに着くと今はありません。日本でたくさん応援してくれている人に会えたこと、同じ目標を持ってレッスンに励んでいる友達にも会えたことがとても励みになっています。

日本では、毎日忙しかったけど、とても充実した時間を過ごすことが出来ました。
私のプライベートを書いても仕方がないのでバレエのことを書きます。。
バレエでは、フリードのトウシューズに2か月かけてシフトすることが出来たのも夏休み中の大きな目標の一つだったので、なんとか履けるようになれたのも本当に良かったです。
(トウシューズの改良方法、改良するシューズが無くなったのでパート4をUpできませんでした・・w)

この1年でこのバレエ団のことでわかったことと言えば、いくら長期の休みあけでも容赦はしない。ということです。第一日目から、コンディションを整えておかないと、いつディレクターが見に来て、ジャッジされるかわかりません。
厳しい話ですが、ディレクターが見たその時の出来が判断材料の全てになります。普段のテクニックのレベルを元にして考えたり、去年の舞台の功績を考慮したりはほぼないようです。
バレエ団がこんな感じなので、夏休み明けで、フリードのシューズが慣れなくてフラフラです・・なんて姿は見せられないのを重々承知していたので、この夏はチャコットに自腹でシューズを買いに行き、レッスンで履いてました。
でも、レッスンだけじゃなく、踊りを通してやってみないとわからない。でも、自分の性格上何か舞台がないと練習しない。。と思い立って、コンクールにまでエントリーしました。
慣れないシューズで舞台で踊るのは怖かったし、コンクールの雰囲気に圧倒されて緊張したけど、何度か舞台で踊ることが出来て、シューズにもずいぶん慣れることが出来たので本当に良かったです。

そのコンクール、最初は、日本のコンクールって同じバリエーションを何か月も繰り返し練習して、その曲だけ上手になったってバレエ団では何も役に立たない。と否定的でした。
でも、実際に出てみて、印象や日本のコンクールに対する意識が全く変わりました。

会場に行ってみると、「こんなにバレエしてる子いるんや・・・」って驚くほど楽屋もロビーもいっぱいです。衣装をつけメイクをした女の子がバーレッスンをしたり、イメージトレーニングをしたり、音楽を聴きながら狭い場所で練習したりしています。
みんなものすごく真剣でした。周りのことは一切気にしない様子で自分の出番に合わせて集中力を高めていってる様子。
子供や若い世代の犯罪やいじめがメディアでたくさん報道され、日本の将来は・・といったニュースもよく見かけるけど、まだまだ日本の将来は大丈夫。って言えるほど目標持って一生懸命頑張ってる子供たちをたくさんみることは嬉しいものでした。(って自分は何しに行ってん・・って思わないでくださいw) 
 コンクールも私が所属するバレエ団のようにその時1発勝負的なものなので、失敗や緊張で実力を出せないと、それがそのまま点数に出てきます。とても厳しいと思うけど、そんな経験を若いころにして評価されることになれることは良いことだと思いました。
海外の日本人の踊りの評価は、「正確」とよく言われますが、こういった声は、こんな日本のコンクールがサポートしてるものなんだなと気づきました。たった数日でいろんなバレエ教室のダンサーを観ることが出来て良い影響や刺激を受けれらる機会は他にあまりありません。

最近では日本各地でたくさんのコンクールが開かれています。
小さな日本のバレエ人口に対して、バレエのコンクールがここまで多いのも、日本のダンサーが成長するために必要あるから。必要のないものはここまで盛んにならないと思いました。
 バレリーナになりたい若いダンサーはどんどん出場するべきだと思います。

さて明後日からは、新しいバレエ団ライフのスタートです。今日スケジュールをチェックすると、一日目から、8月末のパークショーのリハーサル。新しいダンサーもたくさん入ってきます。
ちょっと緊張・・・





2013年7月4日木曜日

Freed のトウシューズ 3

バレエショップで売られているトウシューズはオーダーメイドでない限りサイドは右側、左側同じ長さです。



フリードの場合、何センチカットするとオーダーすれば、職人さんがその通りに作ってくれます。


バレエ団には自分の好みの長さにカットされたシューズが届きますが、それでも足りない時はみんな自分で手を加えています。
なぜ、カットするのかというと、それは足のラインがキレイに見えるから・・それだけです。

なぜ綺麗に見えるかというと、シューズを履いて、ポアントで立った時や、足をのばした時に、通常よりもサイドが短いため、シューズから足の露出が増し、甲の部分も余分見えるので、サイドから見たとき綺麗に見えます。
足の甲がキレイに出てる人はこんな工夫をしなくてもトウシューズで立っただけで十分に綺麗だけど、プロのダンサーでもみんながみんなきれいなアーチをもっているわけではありません。





自分の足が薄っぺらで嫌ーって思ってるのに、一日中鏡の前でトウシューズを履いて過ごさないといけないのはストレスですw なので、手間はかかるけどダンサーはリハーサルの合間に自分のシューズにいろいろな工夫を施しています。





            
これはスタンダードの左右同じ長さのシューズです。





これを、紐のが通ってる縫い目から数ミリ下の布部分にハサミを入れ平行に切っていきます。
             もったいない!って思いますよね・・・すみません。。

こんな感じ。 
           私は縦に入ってる縫い目もざっくり切ってしまうけど、縦に縫い目が                   入ってるところは硬くて切りづらいので、そこまで切らない人もいます。


         ハサミで切った部分を紐が通ってる上の部分を下に重ね合わせて縫っていきます。






   全部縫い終わると、ヴァンプからヒールに向かってくぼんだアーチが出来ます。

通常のシューズよりサイドが短いのがわかりますでしょうか・・・
          

2013年7月1日月曜日

freed のトウシューズ 2

前回書いた、トウシューズの続きです。


私は、本っ当に足の甲が出ていなくて、足をきれいに見せようと力が変に入ってつま先がカマ足になってしまうなど、かなり自分の足にコンプレックスがあります。
フリードのトウシューズでそういった欠点を少しでもカバーできるように、ダンサー仲間にいろいろと教えてもらった方法を写真と説明でかなり雑ですか、いくつか紹介したいと思います。

これは、自分で手を加えなくても、オーダーメイドとして発注すれば、日本からは約半年かかるようですが、トウシューズの職人さんがその通りにサイドやインソールを切って仕上げた状態で送ってくれます。
ちなみに心斎橋のチャコットではすべてのシューズがスタンダードなものでした。
バレエ団では、シーズン終わりにその次のシーズンのために1年間分のシューズをオーダーします。「インソールの硬さ、シャンクの形、サイドは何インチCUTか、ヒールは深めか、浅めか」など一人一人にあったトウシューズを1年分、何十足もオーダーします。

もしも、役に立ちそう!と思っていただければ嬉しいですが、十代の若い生徒さんや、経験年数が浅い方は実際に試される前に バレエの先生と相談されることをお勧めします。
やってみて、こんなんじゃ踊れない!ってなると大変です。。。

まずは、シューズの底(インソール)をカットして、足裏にシューズを添わせるようにする方法です。



                  改造するのはスタンダードのフリードのFメーカー


                    カットするのはインソール




                      布部分をはがします



                カットに使うのはペンチ。。百均にも売ってます

              布の下の黒い板をトウシューズ本体(踵の部分)から剥がします。
            剥がすと踵から数センチのところに一本釘が出てくるのでペンチで抜きます。



               さらに、黒の板を二枚に分けます。(手で結構簡単にできます)

          
            二枚に分けた板の下の方をカットします。私は、大体3,4センチカットす                るのが好きですが、好みによって変えてください。

                 同様に、上の板も、下より短めにカットします。
  
一番上の布を、二枚の板をカバーして折りたためる程度の余裕を残してカットします。





                   後は、包み込むように折りたたみます。




 
                                              取り除いたのはコレだけ。

       
ソールを切るだけでもいろいろな方法があり、踊りの内容によっては(ジャンプが多い        ものなど)半分ぐらいカットすることもあります。
       逆に回転やトウシューズでずっと立っていないといけない踊りなどは二枚に分けた板の       一枚だけをカットする時もあります。






少し手を加えるだけで、トウシューズに足裏が添うようになりつま先を伸ばした             時の印象がかなり変わるはずです。私は足の甲が凹んでるんじゃないかと思う           ほど甲が出ていないので、この方法は必ずやるようにしています。

しつこいようですが、ソールをカットするのは、それなりに足の強さが必要なので、必ず先生に相談してくださいね♪
          




2013年6月26日水曜日

Freedのトウシューズ

日本に帰ってきて早くも2週間が経ちました。

毎年感じるけどやっぱり日本が一番ですね。

さて、私には帰国してから 挑戦していることが一つあります。それは、GaynorMindenのトウシューズからFreedのトウシューズにシフトするということです。
挑戦と書くとめちゃくちゃ大袈裟ですが、ある程度の期間ゲイナーで踊っているダンサーはその他のシューズに履き替えるのはとても大変なのです。
それは、ゲイナーのトウシューズとその他多くのトウシューズでは、造られている素材が違い、またシューズのコンセプトも違うからです。

まずゲイナーは今までのトウシューズにはなかった特別な素材を使っているのでインソール(靴底?)の部分やボックス(つま先で立った時にサポートする部分)の硬さが新品の状態と履き潰れる前とほぼ変わりません。そのほかのトウシューズは履けば履くほどインソールやボックスが柔らかくなっていき、特に湿気のある梅雨時期は本当に寿命が短い。

どうやってそのシューズが潰れたかを判断するのは、私の場合シューズの先端に穴が開いたときでした(笑)穴が開くとピンクのサテン生地から白いプラスチックのような素材が見えてきます。
 そこまで履くには舞台やスタジオの床のコンディションにもよりますが、かなりの期間を要します。

もう一つ、ゲイナーで特徴的なのは、インソール部分が弾力性のあるバネのような素材でつくられていて、ドゥミからポアントに移行するときにそのバネがサポートしてくれるのでかなり乗りやすいということです。また、ポアントで立った時の安定感も明らかにその他のトウシューズとは違い、ポアントでいつまでも立っていられるような安定感と心地よさがあります。

履くことで、バレエの理想のつま先のライン、本来の自分の能力以上のパフォーマンスを引き出してくる。というのが明らかに他のトウシューズと違ったゲイナーミンデンの性質だと思います。

私は数年前初めてゲイナーを履いたとき、その異質さ と履き心地の良さに驚きました。でも、今までのシューズとあまりにも性質が違うので、実際に履いて踊れるようになるにはかなりの時間が必要でした。
でもこの安定感に慣れた今では、他のシューズに履き替えるなんて、考えられません。
 そして何よりもトウシューズが潰れることがない。というのが魅力です、大事な舞台やコンクールのために、一番踊りやすい状態に履きつぶしたトウシューズを練習では使わず大事にとっておく、ということをしなくていいからです。

でも、そのサポート力があまりにも他のシューズと違い優秀すぎるため、まだトウシューズで踊る ことが出来るほど筋力が強化されていない子供や経験年数の浅い方にはあまりお勧めできないような気がします。

なぜなら、ゲイナーは十分な筋力やコントロール能力がなくてもポアントで立たせてくれるからです。

インソールのバネのサポートで立てることは立てるけど、ダンサー自身の足に必要な筋力が備わっていないと、ポアント→ドゥミ→フラット とそれぞれの意向が不自然(あまりにもバネに頼り切っていて自身で上下をコントロールできていないので、見ていて踊りが乱暴に見えてしまう)になってしまうという心配があります。
そして一度このような癖がついてしまうと、その癖を抜くにはかなりの努力が必要です。というかゲイナー以外を履いたことがなければこの意味がわからないかもしれません。
他のトウシューズでは、自分の力でポアント→ドゥミをしないといけないのでそういった癖がつくことはないと思います。

今回私が履こうと頑張っているトウシューズはFreed,ロンドン留学時代は愛用していたシューズです。トウシューズの中では一番オーソドックス、歴史のあるトウシューズで、プロのダンサーの中でも愛用者は多いようです。
実際に私が今所属するバレエ団のダンサーも全員Freedです。ディレクターはフリード大好きで、今回私が大好きなゲイナーからフリードに履き替えないといけない理由もそこにあります。

ゲイナーが、履くことで、バレエの理想のつま先のライン、本来の自分の能力以上のパフォーマンスを引き出してくる。のなら、フリードは、その理想のラインやパフォーマンスを訓練に訓練を重ねた自分自身の筋力や経験によって自分で造っていく。って感じでしょうか・・。
本当にフリードのシューズはきちんと訓練できているダンサーが履くと、何も履いていないかのように自然に踊っているように見える素晴らしいシューズです。

でも、その理想的なラインを造っていくためには、ただ買ってきたシューズをそのまま履いてたくさん練習すればよいというものではありません。(私は学生のころはそんなこと全く知りませんでした)

プロのダンサーは自分の足の形に合わせていろいろと試行錯誤して、より踊りやすいように、よりきれいなラインに見えるように、シューズを改良しています。

私もフリードに変えてからバレエ団の女の子たちにいろいろと教えてもらい、新品のシューズに手を加えるようにしています。個人差があるので、参考にはならないかもしれなけど、これから、いくつか紹介してみようと思います。










2013年6月6日木曜日

シーズンエンド&帰国



長かった新しいバレエ団での1年、ようやく6月1日で終わることができました。

本当にいろいろとあった1年でした。特に今年に入ってからは、いくら頑張っても団内では透明人間状態だったので、シーズン途中で辞めるとか、2年目は絶対に契約更新はしない。と自分に言い聞かせてやっとのことで毎朝通勤していた時期もありました。

でも1シーズン終えてみて、一言いうとしたら・・・辞めなくてよかった。
もちろん、一度失ったものを取り戻すのはそう簡単ではないので、2年目からも厳しいポジションからのスタートだけど、アメリカに最初に足を踏み入れた時よりも、この国を最後に出るときのほうが精神的に強くなっていたい。ズタボロにされて悔しい思いをし、自信喪失してこの国を後にはしたくありません。

なんでこんなに理不尽な扱いなの?!といい年して人前で泣いたり、皮肉を言われ大恥をかいたり、いろいろあったけど、あの一番辛いときに逃げていたら、今その時のことを思い返して、痛くも痒くもない。と思えなかった。過ぎてしまえば全部思い出でしかありません。でもその時に逃げるとトラウマになり、次同じようなことが起こっても免疫がないのでまた辛くなる。と思います。
そう思えるようになっただけでも進歩だと思って、バレエ団には感謝して、このシーズンを終えたいと思います!!
あとは日本での夏休み。とても楽しみです♪





               最後の野外公演にテレビの取材が入りました。

2013年5月27日月曜日

シーズンエンド


後1週間でバレエ団のシーズンが終わります。
まだ5公演残っているけど、夏の間アパートを空けるので大掃除をしたり、スーツケースを出して帰国の準備をしていると、もう終わりなんだな・・と実感します。





















ようやく山を越えた野外公演。あと5公演・・・。
ステージの周りが自然公園なので砂は飛んでくるし、虫は飛んでるし、風はきついし、リノリュームは日に日にベトベトになり踊りにくいしで、きれいな写真からは想像できないほど大変なことになっています。。

この3週間の野外公演、チケットーセールスはかなり好評で毎晩ほぼ満席です。去年と今年と2年連続で企画されてる公演だけど、来年はないみたい。
私の個人的な感想は、いくら好評でもやっぱりバレエはちゃんとした劇場でやるもので、お客さんもバレエを観た。とは言えないと思います。

本番を毎日繰り返していると、後半になってくるとさすがにみんな疲れてきて、少しづつ踊りのクオリティーが落ちていきます。野外ステージなので普段のステージとは条件が違いリノリュームのつなぎ目に凹凸があったり、やけに滑るところがあったり、余計に注意しないといけない点がたくさんあるし、強い風に長時間ほぼ裸のような衣装でさらされていると集中力も落ちてきます。
みんな笑顔で踊ってるけど、内心は「キャー虫が近寄ってくる!!」とか思ってたりするので、お客さんには本当に失礼な話なんですが・・・。

でもバレエは全神経を集中して自分の最高の状態をつくりだして初めて 良い舞台になると思うので、そういう努力をダンサーができる最低限のコンディションは必要だと思います。
今回の経験で完全にアンチ・野外公演な私になってしまったけど、アメリカのバレエ団では結構普通だったりするようです。。。
でもなんといっても後5回。。頑張ります。



2013年5月15日水曜日

野外公演



 このシーズン最後のプロダクションは野外での公演です。
確かシーズン始まりもフリーチケットでパークショーを行いましたが、今回は違います。
大きな特設ステージの前にはテーブルとイスのセットが何組も設置されてあり、チケットを買っていただいたお客さんはその席で、ワインなどドリンクサービス着きでバレエを鑑賞できるようになっています。
何とも斬新な、、でもこれがかなり評判が良いようで、去年試しにやってみると バレエ団にとってはかなりの収益だったそう。そして、今年も期待に応え、2年目の長期野外公演期間に入りました。

ドレスリハーサル含め約20回の舞台で3週間。これからシーズン最終日の6月1日まで、ほぼ毎晩公演になります。
2週間前のAll Balanchineに比べたら内容も、体力的にもかなり楽だけど、野外・・というのが。。ダンサーにとっては厳しいです・・パークショーの時と同じく、リノリューム(バレエ用のフロア)の状態や、ライトに集まってくる虫たち・・ いつも気にしなくていいことが気になって仕方なくなるのです。

去年のパークショーではバランシンのセレナーデをやったのですが、芝生にマットを敷いて、星や月をバックにバレエを見るなんて最高だ(しかもフリーで・・)。って思ってくれたお客さんもたくさんおられたと思います。
でも、舞台上では、ポーズで立っている時にある女の子の衣装のスカートに大きなカナブンがとまり離れなくなって内心パニックになったり、笑いをこらえたり、大変でした。






後15回、何が起こるのか。。。